東亞合成研究年報12号

2009年1月1日発行

論文

ラミニンレセプターのラミニン結合部位を基にした抗菌ペプチド設計方法

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細胞接着性糖タンパク質であるラミニンは、細胞の接着、増殖、転移、分化、および神経突起伸長などの様々な生物活性に関与している。多くの細菌は、ラミニンと相互作用するラミニンレセプターに類似したタンパク質を有し、感染の初期段階において細胞接着相互作用を利用することが知られている。本研究では、ラミニンとラミニンレセプターの接着相互作用に着目し、これらのタンパク質の結合部位を基に抗菌ペプチドを分子設計および合成し、その抗菌活性評価を行った。その結果、細菌が有するラミニンレセプターへ相互作用が期待されるラミニンを基にしたペプチドではなく、ラミニンレセプターを基にしたペプチドが非常に優れた抗菌機能を有することが明らかとなった。本研究は、タンパク質のリガンドとレセプターの関係を基本とした従来の創薬研究に対し、レセプターに対しレセプターの相互作用を想定した新しい抗菌ペプチドの設計方法を提案するものである。

Y型-A2Bブロックポリマーの合成とその特性

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ベンゼン環の1、3、5位に一つのリビングカチオン重合開始点と二つのリビングラジカル重合開始点を導入したマルチ開始剤(R2C1-Init)を設計し、これを用いて両重合を行うことで、より明確なY型構造を有するA2Bブロックポリマーを合成した。ここではカチオン重合性のモノマーとして、疎水性・ソフトセグメントとなるイソブチルビニルエーテル(IBVE)を、ラジカル重合性モノマーとして、ハードセグメントとなるメタクリル酸メチル(MMA)、親水性セグメントとなるポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)を用いて、A2B-Y型ブロックポリマーを合成した。

Y型に基づく物性を粘弾性、小角X線散乱(SAXS)および動的光散乱(DLS)測定により評価した。Y型-A2Bブロックポリマーは同組成のAB-ジブロックポリマーと比較して、秩序無秩序転移温度(Order-Disorder-TransitionTemperature、ODT)が低いこと、ゴム領域の弾性率が高くなること、および、メタノール中のミセル粒径が小さいことを確認した。

解説

ブロックポリマーのミクロ相分離および構造形成

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2000年のクリントン演説に端を発したナノテクノロジーは、多くの科学技術の領域で飛躍的な発展が期待されており、キーテクノロジーのひとつとして幅広い分野への応用も拡がっている。実際に、産官学を巻き込んでの開発から、バイオ、医療、エネルギー、材料等の各種分野において多数の新規なシステムの提案もなされている。

新技術紹介

アクリル系ポリマー「ARUFON」によるシーリング材の耐候性向上

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近年、省資源、省エネルギーの観点から、各種材料の耐久性向上が求められ、環境への配慮も必要とされている。建築関係では、住宅品質確保促進法、建設工事資材再資源化法等により、住宅の品質と性能を向上しようとする取り組みが行われている。このようなことを背景に、シーリング材についても、耐候性などの各種性能の向上が求められるようになってきた。

新製品紹介

シルセスキオキサン誘導体「光硬化型SQシリーズ」

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近年、ケイ素系の新素材としてシルセスキオキサンが注目を浴びている。シルセスキオキサンとは、主鎖骨格がSi-O結合からなるシロキサン系の化合物で、(RSiO1.5)nの組成式で表される。単位組成式中に1.5個(1.5 = sesqui)の酸素を有するシロキサンという意味で、「Sil-sesqui-oxane」と称される。シロキサン系の化合物としては、有機ケイ素ポリマーの代表格であるポリシロキサン、いわゆるシリコーン(単位組成式:R2SiO)が良く知られている。また、無機化合物であるシリカ(単位組成式:SiO2)もシロキサン結合から成る代表的な化合物の一つである。これらの組成式を見比べて分かるように、シルセスキオキサンはシリコーンとシリカの中間的な存在として位置づけられる。

新規塗料原料の開発 アロニックスUVT-302

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紫外線(UV)および電子線(EB)硬化技術は、ゼロエミッション、省エネルギー、高生産性などの優れた特徴を有するため、効果的に環境負荷低減が可能で、塗料、インキ、フォトレジスト、接着剤などの材料に応用され、各種産業分野において広く利用されている。

東亞合成株式会社では、特定のマレイミド基を有するアクリルポリマーが紫外線硬化型塗料の原料に好適であることを見出し、その工業的製造に成功した。本稿では、マレイミド化合物の光化学について解説するとともに、開発された新規塗料原料であるアロニックスUVT-302の特性についてまとめる。

チタニア-シリカ複合光触媒液「ツルクリーン」

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光触媒は防汚、セルフクリーニングという性能により自動車のサイドミラーやテント、建築物の外装、道路資材等に用いられている。

一方、シックハウス症候群の原因物質と考えられるアルデヒド類の居住空間における低減は一段と注目されており、室内用途への光触媒の展開は非常に期待されている。

当社では福岡大学中野研究室にて開発された酸化チタン光触媒液の合成法を元に検討を進め、チタニアーシリカ複合光触媒液「ツルクリーン」を開発した。この「ツルクリーン」の特徴を紹介する。

新規抗アレルゲン剤「アレリムーブ™」

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スギ花粉等による花粉症や、ダニ等が原因のハウスダストによるアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患に悩む人が近年急増し深刻な問題となっている。アレルギー症状を引き起こす原因物質であるアレルゲンは通常体内に入ると、アレルゲンに対する抗体と反応し、肥満細胞からヒスタミンが放出され、かゆみや炎症などを引き起こす。この治療法としてこれまでに、抗アレルギー剤や外用ステロイド剤等の開発が進んでいるが、あくまで対症療法であり根治的な治療法ではない。よってアレルギー性疾患の症状軽減あるいは新たな感作を低減するため、アレルゲン自体を人体中に吸引される前に生活空間から少しでも取り除く、もしくは変性させ無害化させることが望まれている。そこでこの度当社が開発した新しいタイプの抗アレルゲン剤「アレリムーブZTP-170」について紹介する。

タイル張り仕上げ外壁用改修工法「クリアウオール」

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タイル張り仕上げ外壁(以下、タイル外壁と称す)は、鉄筋コンクリート躯体に対して、吸水率が低く、耐久性に優れた無機質のタイルをセメントモルタルで張付け、目地を形成した積層構造の外壁仕上げ構法である。様々な形状やテクスチャーを有するタイルを張り付けた外壁は、建物に個性や高級感のある意匠を与えることから、マンションや商業ビルを中心に多く使用されてきた。

研究コラム

タイトル 掲載 所属 執筆者名
研究開発と組織の力[PDF:610KB] 『TREND』12号 基盤技術研究所長 新妻 裕志
中国での生活[PDF:1.89MB] 『TREND』12号 経営企画部経営企画グループ 尾崎 美喜雄

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