PROJECT
STORY
リチウムイオン二次電池用バインダー
開発プロジェクト

未開の地だからこそ、
道は自ら拓いていく。
電気自動車に不可欠な次世代型電池であるリチウムイオン二次電池。
東亞合成では、その性能の向上に大きく寄与する用品であるバインダーを開発しました。
東亞合成が強みとする素材を活かしての開発ではありましたが、実は電池という分野そのものは知見のない未開の地。
しかし、先の見通せない中でも怖れることなく進み続けたことで、ブレークスルーは生まれたのでした。
PROJECT MEMBER
2008年入社/工学研究科
物質制御工学専攻修了
研究部門
2009年入社/自然科学研究科
分子物質科学専攻修了
研究部門
2015年入社/工学研究科
化学・生物工学専攻修了
研究部門
2018年入社/工学研究科
生命応用化学専攻修了
製造部門

PHASE 01
強い危機感のもとでの出発
「電池ですか? 本当に未知の領域に挑むのですか」
2014年、「リチウムイオン二次電池用バインダー開発プロジェクト」への参画を聞いたとき、N.Sさんは強い戸惑いを覚えました。
話は1年前にさかのぼります。東亞合成では、次の成長軸となる領域を探索するため、アクリル酸の活用を前提とした事業強化プロジェクトが発足していました。T.Hさんは当時をこう振り返ります。
「化学メーカー間の競争はますます激しくなっていました。しかし、私が入社して以来、大型の新製品が誕生していないという危機感が社内に広がっていたのです」1年にわたる探索の末、「東亞合成の高分子合成技術を活かして、リチウムイオン二次電池用バインダーを開発できるのではないか」というテーマが選定されました。
とはいえ、東亞合成はそれまで電池市場とはほとんど関わりがなく、知見もあまりない状況でした。また、N.Sさんにとっては、まさに“ゼロからの挑戦”でした。それでも次世代の事業を育てるためには、新しい領域に踏み出す必要があります。「わからないからこそ、やるしかない」と覚悟を決め、プロジェクトへの一歩を踏み出しました。

PHASE 02
執念が実った
クリスマスプレゼント
プロジェクトが始動した頃、リチウムイオン二次電池市場は急拡大していました。電気自動車(EV)の普及に伴い、電池性能を支えるバインダーへの期待も高まっていたのです。
しかし、先行メーカーに追いつくには独自の強みが必要でした。
素材の試作・評価・改良を何度も繰り返す日々が続き、結果が出ないまま1年半が過ぎていきました。
そんな中、N.Sさんたちは別テーマで開発されていた新素材に着目します。「この素材をバインダーに応用してみてはどうか」というアイデアが生まれました。テーマの垣根を越えて情報共有が進むのは、東亞合成らしい風通しの良さの表れでもあります。
そして――12月24日。
「素晴らしい結果です、信じられません!」
顧客から興奮気味の電話が入りました。
N.Sさんは「運が味方した部分もあります」と笑いますが、1年半もの間、諦めずに挑戦し続けた“執念”が生んだ成果であったことは間違いありません。この出来事は、メンバーにとって忘れられないクリスマスプレゼントとなりました。

PHASE 03
“えっ、1年目の私が”と絶句
クリスマスの成功をきっかけに、年が明けた2016年から一気に局面が変わりました。顧客から高い評価を得たことで、量産化に向けた製造プロセスの確立に移行したのです。しかし、その期限は非常にタイトでした。市場競争が激しさを増す中、スピードが何より重要だったのです。
そこで重要な役割を担ったのが、入社2年目で配属されたA.Hさんです。
素材の設計から合成・評価まで任され、特に苦労したのは「社内に存在しない評価方法」をゼロから確立することでした。
電池コンソーシアム、大学研究室、外部の技術者――A.Hさんはあらゆる場所で知見を吸収し、新たな評価技術を東亞合成にもたらすことに成功しました。
もう一人、思いがけない大役を任されたのが入社1年目のT.Fさんです。
「数ヶ月後には、生産量を倍にしてほしい」
上司からの言葉にT.Fさんは「1年目の自分が?」と驚いたといいます。
製造工程の知識を習得しながら、オペレーターと協力して品質の安定化に挑みました。そして確立したノウハウは、後に立ち上がる専用プラントの設計にも活かされることになります。

PHASE 04
社会のために、地球のために
A.Hさんが導入した評価方法も、T.Fさんが築いた製造ノウハウも、いずれも東亞合成にとって初めての取組みでした。若手メンバーの挑戦は、確かな技術基盤として同社の歴史に刻まれています。
N.Sさんはこう語ります。
「電池分野は全員がゼロからの挑戦でした。そのため、若手にも積極的に裁量を任せたいと考えていました。未知の領域では、ベテランも若手も関係ありません」
そんな環境で、A.Hさんは「電池評価のスペシャリストになりたい」と目標を掲げ、T.Fさんは「“困ったらあの人に聞けばいい”と言われる存在になりたい」と語ります。
このプロジェクトで開発されたバインダーは、電池の容量拡大と耐久性向上に寄与し、電気自動車の航続距離延長に大きく貢献しました。結果として、CO₂削減をはじめとした環境負荷の低減にもつながる技術となりました。
この成果は、プロジェクトに携わったすべてのメンバーにとって大きな誇りとなっています。
世の中に価値ある
何かを送り出す
T.Hさんは「私たちの生活は多くの化学製品に支えられており、化学メーカーでの仕事は世の中の役に立っていることを実感できるはずだと考え、この業界を志望しました」と話します。
N.Sさんも「自分の開発した材料が世の中に貢献していることを強く実感できます」と語っています。実際に、このプロジェクトで開発したバインダーが使われている電気自動車はすでに街中を走っており、その姿を見かけるとN.Sさんは「非常に嬉しく、誇らしい気持ちになります」と話していました。
そして、化学メーカーならではのこうした社会への貢献を、ごく若手の時期から体験できる点は、東亞合成ならではの魅力だとT.Hさんは言います。「誰でもチャレンジでき、1人ひとりが主役として仕事に取り組めます。今後も、今回のプロジェクトのような成功体験を多くの若手社員に持ってもらえればと思います」。
そのチャレンジの扉は、誰にでも大きく開かれています。