東亞合成研究年報17号

2014年01月01日発行

論文

フリーラジカル溶液重合を用いた高分子量アクリルポリマーの合成 -重合条件と分子量の関係-

高分子量ポリアクリル酸エステルは粘着剤、ゴム、エラストマーなどに使用されており、性能を決める因子として分子量は非常に重要である。しかし、高分子量ポリアクリル酸エステルの合成に関して、重合条件と分子量の関係を体系的にまとめた報告例は、非常に少ない。
本研究では、重合条件と分子量の関係を理解するために重要な要因である1.溶媒への連鎖移動定数、2.開始剤効率の粘度依存性、3.Back Biting反応が重合速度及び分子量に与える影響の測定をおこない、重合モデルの検討を行った。その結果、1.~3.を考慮した重合モデルから計算される分子量、重合速度と重合実験で得た結果は非常によく一致した。また、高分子量アクリル酸エステルを得るためには、溶媒への連鎖移動、仕込みモノマー濃度が重要であることが明らかになった。

解説

プラスチック板から発生するガスと粘着剤の発泡の関係

現在、スマートフォンやタブレット端末のように、インターフェイスとしてタッチパネルを搭載した機器の普及が進んでいる。これらの機器は、図1に示したようにカバーパネルとタッチパネル、ディスプレイが粘着剤で積層された構成となっている。
粘着剤には透明性や各種材料に対する十分な粘着力のほかに、高温や高湿下でも貼合部に欠陥が生じないような高い耐久性が求められる。その他にも、カバーパネルの額縁印刷周辺に欠陥が生じないような追従性などが求められることもある1)。

新製品紹介

導電性高分子用パターニング薬剤「クリアイマージュ」

スマートフォンやカーナビなど、タッチパネルは今や我々の身の回りに溢れ、日常生活に欠かせない存在になっている。このタッチパネルのセンサー部の多くには、Indium Tin Oxide(以下ITOという)を用いた透明導電膜が使用されているが、供給不安、高コスト、フレキシブル性の無さ、歩留まりの悪さなどから、銀ナノワイヤやカーボンナノチューブなど、代替材料への置き換えが盛んに検討されている。導電性高分子もその1つで、とりわけポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSSという)が導電性と安定性の両面から導電性高分子の中で特に優れている。導電性高分子の透明導電膜は有機物だけで構成されていることからフレキシブル性に非常に優れており、加えて原料の供給不安が将来に亘りないことが強みである。

新規消臭不織布マスク「ケスモンマスク」

近年、花粉症、インフルエンザ、PM2.5など空気中に含まれる有害物質の対策として高性能なフィルター機能を備えた不織布マスクが普及し、一般消費者に広く使用されるようになってきた。また、従来から化学工場、畜産場、汚物処理場、清掃業等の作業現場では臭気の問題があり、消臭不織布マスクが使用されている。
現在市販されている消臭不織布マスクの消臭有効成分の多くは活性炭である。活性炭は物理吸着により悪臭成分を吸着するため、広範囲の臭気成分に対して消臭効果を示す。しかし、消臭マスクは呼吸により通過する悪臭ガス成分を短時間で吸着する必要があるが、活性炭の吸着速度は十分ではなく、より吸着速度が速い消臭剤が必要である。また、光触媒により悪臭成分を分解するタイプや、植物成分由来の有機系消臭剤を配合したマスクもあるが、これらも呼吸により通過する短時間の接触では十分な消臭効果が得られない。一方、吸着ではなく悪臭ガスをマスキングにより消臭する香料含有タイプもある。これは悪臭ガスに他の臭気を被せて不快感を軽減させるものであるが、香料に対する好みには個人差があり、人によっては不快感を催すこともあり万能とは言えない。

排泄における課題を解決するオール樹脂製ポータブルトイレ“ジャスピタ”

日本の高齢者(65歳以上)人口は、2015年まで急速な増加を続け、それ以降も75歳以上の後期高齢者人口が増加を続けていくと予想される。この高齢化社会の中で、加齢に伴う病気や事故などにより介護を必要とする状態になっても尊厳を保持し、できる限り自立した日常生活を送れるよう、必要な介護サービスを提供する制度として、介護保険制度が運営されている。利用できるサービスの一つとして、ポータブルトイレの購入費の補助がある。ポータブルトイレは、ベッドから離れることはできるがトイレまで行けない、またはトイレまでの移動が不安定な方のために、主として寝室で使用する排泄用具である。当社はポータブルトイレを約40年前から業界で先駆けて製造・販売してきた歴史があり、その中でも2003年に発売した樹脂製ポータブルトイレ "FX-CP" は市場での高い評価から、現在までトップシェアを得てきた。その"FX-CP" を発売し10年が経った中で、お客様から多くの改善要望をいただいくことができ、これらの要望に応えるべく更に進化を遂げた新型樹脂製ポータブルトイレ“ジャスピタ”を発売することとした。

研究コラム

コーポレートブランドを高める研究開発

掲載:『TREND』17号
所属:研究開発本部長
執筆者名:野村 聡一

My Internship Experience

掲載:『TREND』17号
所属:基盤技術研究所(インターン生)
執筆者名:Vance Nguyen

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関連情報