東亞合成研究年報28号

2025年01月01日発行

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研究年報TREND 第28号

巻頭言

「面白い!」を追求する

新技術紹介

アロンフィブロ®から得られる酸化CNFの化学修飾と光硬化性モノマーとの複合化

植物を原料としたCellulose Nano Fiber(CNF)は高い強度や透明性などの特長から環境負荷の小さい高機能材料として注目されている。東亞合成では、低粘度で扱いやすいCNFを独自に開発し、CNF前駆体「アロンフィブロ®」として上市している。 一方で、CNFはその高い親水性のために疎水性材料への分散性が悪い。本検討では、CNF表面の水酸基を修飾する疎水化法を検討し、有機溶媒に良好に分散する疎水化CNFを開発した。この疎水化CNFと光硬化性モノマー「アロニックス®」とを混合して調製したCNF複合塗膜を評価したところ、硬度や耐擦傷性の向上に加えて、フォルダブルディスプレイのハードコート材に求められる屈曲性も付与できることがわかった。

リチウムイオン電池用負極バインダーの開発

東亞合成では、高容量リチウムイオン二次電池(LIB)向けの新規バインダーを開発・上市している。本稿では、そのバインダーの特性について紹介する。 東亞合成の独自技術により粒径の揃ったポリアクリル酸(PAA)粒子を合成可能であり、この形状によりLIBの負極用バインダーとして高い性能を示すことがわかっている。特にシリコン系活物質を使用する際に、サイクル特性の向上および電極膨張の抑制効果が確認された。また、適度なイオン伝導性を有するため、従来のバインダー系と比較して低抵抗なLIBを製造することが可能である。本バインダーは、様々な設計の負極にも対応可能と考えており、今後も続くLIBの高容量化(=EVの普及)のキーマテリアルとなることが期待される。

新製品紹介

ポリアクリル酸をベースとした新規止血材の開発

近年、高齢化社会の加速に伴い、高度な止血性能を持つ「止血材」が強く求められている。しかし、従来の止血材は、コラーゲンなどの生体由来材料を原料に持つため、感染リスクが高いことや、生体組織への接着性がないため、縫合処置が必要となることなどの課題がある。
このような背景の中、当社では、安全性の高い合成高分子であるポリアクリル酸とポリビニルピロリドンを原料とした新規止血材を開発している。本止血材は生体組織への強い接着性を持ち、従来の止血材の課題を克服する画期的な素材となり得る。本技術は、2024年に薬事承認を取得した歯科用止血材を始めとし、今後もさまざまな用途への展開が期待される。

CMP用ポリマー添加剤の開発

CMP(Chemical Mechanical Polishing, 化学的機械研磨)は、化学的反応と機械的研磨を組み合わせて対象物表面を高精度に平坦化する技術である。半導体製造の積層工程ごとに、CMPによる平坦化を行うことで各層の均一性が確保され、半導体デバイスの多層化・複雑化が達成できる。
CMPには、様々な添加剤を含むスラリーと呼ばれる化学薬剤が使用される。近年、半導体の高性能化と需要増加に伴い、平坦性の向上と研磨速度の確保という相反する特性を実現する研磨調整剤が求められている。これを達成するため、リビング重合技術を用いて高度に構造制御されたポリマー添加剤の開発を行った。その結果、分子量分布を制御し、疎水ブロックを持たせる構造制御を行うことで、優れた研磨性能を示すポリマーが得られた。

暗部硬化性UV硬化接着剤

UV硬化接着剤は、低環境負荷、高生産性などの利点によって用途や市場が拡大しているが、光が届かない暗部は硬化しないという大きな欠点がある。これまでは、湿気硬化や熱硬化の併用で暗部を硬化させることが多かったが、硬化時間の長くなるなどの問題があった。
当社は、UV照射だけで暗部硬化を可能にする新規硬化システムを見出し、これを応用したUV硬化接着剤「アロニックスUVX-8032、8037」および剪断強度改良品「アロニックスUVX-8092、8093」を開発した。本接着剤は一液であり、かつ室温での短時間UV照射のみで遮光部(最大20mm)を含めた硬化が可能である(接着剤膜厚0.5mm)。

新規無機系陰イオンキャッチャー「IXE®-700H」

近年、第5世代移動通信システム(5G)や電気自動車(EV)の普及に伴い、半導体技術は急速に進化しており、電子機器の小型化と高性能化への要求が一層高まっている。これに伴い、半導体パッケージ分野では、配線の狭ピッチ化やパワー半導体用途に対応した高耐久材料の開発が進められており、イオン捕捉剤に対する要求性能も高度化している。こうした次世代のニーズに応えるため、当社では新規無機系陰イオン捕捉剤「IXE-700H」を開発した。「IXE-700H」は、幅広いpH環境において優れたイオン捕捉性能を発揮し、エポキシ樹脂に添加することで耐湿信頼性を大幅に向上させることを実験的に確認した。本稿では、新規無機系陰イオン捕捉剤「IXE-700H」の特徴およびその優れたイオン捕捉性能について詳述する。

介護業界のDX化を見据えたIoTポータブルトイレの開発「FX-30 自動計測タイプ」

当社は介護する人と介護を受ける人が快適な生活を過ごすため、「安寿」ブランドで『「やりたい」を「できる」に変えよう』というブランドメッセージのもと、介護用品の開発に日々取り組んでいる。主力である「入浴・排泄」商品は現場のニーズを叶える機能を提案し、市場からの評価を受け、いずれもトップシェアを誇っている。一方、介護現場では労働人口が不足しており、テクノロジーを活用した生産性向上が求められ、介護用品においても電気・通信技術を活用したデジタル化が求められている。
本稿では業界初のポータブルトイレのIoT(Internet of things)化により“排泄重量の見える化”と“見守り負担の軽減”を実現した「FX-30 自動計測タイプ」の開発過程と機能について紹介する。

技術文書発表一覧表

技術文書発表一覧表(2023年10月~2024年09月)

編集後記

編集後記

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