COOメッセージ
社長就任から一年。見つめ直した『技術の東亞合成』
化学産業を取り巻く環境は、地政学リスクの高まりや海外新興企業の急速な技術キャッチアップ、産業構造の急速な変化など、一層厳しさを増しています。このような環境の中で、持続可能な企業価値向上には、既存事業の的確な守りと、時流に乗った高付加価値製品の継続的な立上げが不可欠と言えます。
社長に就任してからの一年、各事業所に足を運び、当社グループの強さの源泉であるDNAをあらためて見つめ直してきました。研究・生産・営業をはじめとする最前線で力を尽くす従業員と直接対話する中で、「優れた技術で社会課題を解決したい」、「事業の競争力をさらに高めていきたい」という、当社グループが創業以来一貫して受け継いできた“挑戦” と“創造” の精神を確かな熱量として感じています。現場の気づきや提案、そして想いと挑戦こそが、技術や事業の進化を生み出すと考えています。
当社グループには、困難な課題にも果敢にチャレンジする気概・風土があり、誠実でスキルの高い従業員たちがこの成長と革新をリードしています。一人ひとりの自律と多くの社内外の関係者との共創がグループの力となり、社会とともに進化する企業文化が確実に根付いている——その手応えを、私はこの1年の歩みの中に見出しています。
この挑戦と共創により生み出され、積み重ねてきた「技術の東亞合成」としてのDNAを胸に、より一層、“技術で未来を切り拓く” 決意でグループ一丸となって前進してまいります。
化学メーカーに求められる役割 ~イノベーションで社会の課題を解決する~
化学メーカーである当社グループが目指す姿は、製品の供給者にとどまらない「イノベーションで社会の課題を解決する存在」へと進化することです。産業構造が変化し、新たな価値が創出されるステージでは、必ず化学製品が重要な役割を果たしています。例えば、先端半導体の製造に欠かせない世界トップシェアを誇る高純度液化塩化水素や高純度カセイカリ、EV(電気自動車)からHV(ハイブリッド車)、FCV(燃料電池自動車)の性能向上に欠かせない高機能接着剤やポリマー製品群、カメラとAIを活用し非掘削で破損箇所を特定可能なシステムと組み合わせた下水道補修対策事業などです。いずれも快適な生活やテクノロジーの進化に欠かせない製品群であり、社会のさまざまなシーンで活躍しています。
化学製品は未来を形作るツールであり、産業の変革をけん引するエンジンともいえます。当社グループは、これまで、先端分野における技術革新の動向を常に捉え、蓄積してきた素材力とアカデミアやベンチャー企業との共創により生み出された唯一無二の技術を元に、社会課題を解決する優れた製品を生み出してきました。これからも革新的な製品を群として次々と創出し、化学の力で豊かな未来を創り出していく——そこに当社グループの存在意義があると考えています。
リチウムイオン電池用バインダーは、EVをはじめデータセンター向け蓄電システムなど、産業の変革をけん引するさまざまな製品に使用されている。

EV

データセンター

ドローン
モビリティ分野の注力製品群の一角を占める(出典:トヨタ自動車株式会社)。



2025年中期経営計画(2023~2025年)の3年間を振り返って
2025年中期経営計画(以下、前中計)では、新製品・新技術の開発力強化と海外売上高拡大を基本方針とし、収益拡大と企業価値向上を目指しました。
新製品・新技術の開発力強化については、川崎市に研究所を新設し、過去最高の研究開発費投入により開発力強化を進めました。海外売上高拡大については、中国・インド・ベトナムにも新拠点を立ち上げ、8ヶ国13拠点の陣容で現地ニーズの獲得を目指す体制を築きました。成長ドライバーの半導体やモビリティ向けの投資も計画通り実施し、攻めの準備は整ったものの、市場の回復遅れや固定費増加の影響から、収益は伸び悩みました。一方で、基幹化学品や樹脂加工製品などの基幹となるセグメントは、不採算製品の見直しや適切な価格改定などにより、採算性が改善しました。今後の課題は高付加価値製品群の強化に集約されます。
財務面では、総還元性向100%以上の継続により、2025年の1株当たり当期純利益(EPS)は過去最高となりました。総資産圧縮や社債発行による財務レバレッジ活用も進めましたが、PBR1倍を下回る状況が継続しており、株価を意識したさらなる対策強化が重要です。

2028年中期経営計画(2026~2028年)が目指すもの ~「共創」で未来を拓く~
2030年の目指す姿、「No.1・Only1の高機能製品を群として保有し、社会課題の解決に貢献」、「積極的な成長投資、資本構成の最適化による企業価値向上」に向けて、2028年までに営業利益180億円、PBR1倍以上を目指します。
当社グループの強みは、安定的に利益を生み出す基幹製品と高付加価値製品の両輪を有する点ですが、高付加価値製品群の利益創出力強化が課題です。2028年中期経営計画(以下、新中計)ではあらゆる施策を講じて、高付加価値製品群の利益面での復権を目指します。時流に乗る注力分野である「モビリティ・半導体・メディカル・環境インフラ分野」はテーマの宝庫です。広さ(用途展開)と深さ(技術の差別化)を追求し、国内外のユーザーへ展開を進めます。この時、自社技術だけでなく外部の優れた技術も取り入れ、さらにスピード感を持って研究開発を行う必要性を感じており、他社との提携やM&Aの機会も探っていく方針です。海外展開については、高付加価値製品群を主軸に海外市場へ挑むとともに、米国の瞬間接着剤拠点やタイのポリマー製造拠点といったグローバルな販売ネットワークを活用し、事業拡大を図っていきます。まさに前中計の目標でもあった、新製品開発と海外売上高拡大に再チャレンジします。
財務戦略としては、PBR1倍達成を重視し、積極的な株主還元と株主優待制度の継続により、株式市場での評価を高めます。今後3年で次期中計につながる利益体質へ変革すること、その布石となる社会課題を解決する多くの新製品を上市することで、『技術の東亞合成』としての魅力を伝え、株主の皆様の期待度を示すPER(株価収益率)を向上させ、PBR1倍以上を実現します。
新中計のスローガン「共創で未来を拓く」は、顧客やアカデミア、ベンチャー企業、そして社内の各部署とも連携し、早期にそして確実に未来を切り拓いていく、という意味を込めています。不確実性の高い時代だからこそ、変化を恐れず、むしろチャンスと捉え、関係者全員で新中計の達成を目指します。

サステナビリティ経営の推進

当社グループは、「事業を通じた社会的価値の提供」および「永続的な企業基盤の強化」を目指しています。GHG(温室効果ガス)の排出削減をはじめ、女性活躍やダイバーシティ目標の推進など、非財務KGI(重要目標達成指標)についても明確なロードマップを設定し、対応を進めています。
カーボンニュートラルへ向けて
2050年にカーボンニュートラル、2030年に2013年比50%のGHG削減を目指しています。2025年から主要工場で太陽光発電を順次稼働し、2026年からは「横浜市ごみ焼却場のカーボンニュートラル蒸気利用によるボイラー燃料削減」を開始しました。また、当社グループ初となる小水力発電も2026年からの運転を予定しています。これらの施策を通して、2028年には2013年比40%のGHG削減を目指していきます。
活力と創造性にあふれた組織づくり ~人的資本戦略・DX戦略の推進~
人的資本戦略の基本方針は、エンゲージメントの向上と、いわゆる共創を通じて持続的な発展を実現することです。対応策として報酬水準の向上、転勤猶予制度や健康経営の推進などによる労働環境の整備、人財の獲得強化、若手従業員の育成、多様な従業員が活躍できる環境の整備を推進していきます。
当社は、従業員の疾病予防施策や健康意識向上への取組みが評価され、通算6回目の「健康経営優良法人2026(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されました。従業員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮できる活力と創造性にあふれた組織は、企業価値の向上や持続的な成長の基盤であり、今後も従業員の健康保持・増進の取組みを推進し、サステナビリティ経営を進化させていきます。
当社グループは、DXを中期経営計画の実現に向けた経営戦略の重要な要素として、単なるデジタル化ではなく、競争力を高める経営変革と位置づけています。DXを通じて、高収益・安全・安定供給を支える現場力の強化、研究開発の高度化、業務プロセスの変革を実現し、顧客価値の向上と持続的成長につなげます。重点テーマは、スマートファクトリー化、AI/MI(マテリアルズインフォマティクス)による研究プロセス変革、間接業務の効率化です。これらを全社横断で推進しながら、デジタル基盤整備や業務標準化、デジタル人財の育成・確保を進めています。KPIを段階的に整備・拡充し、定期的なモニタリングを通じた改善により、全社の競争力強化につなげていきます。
ステークホルダーの皆様へ
東亞合成といえば「アロンアルフア」を連想されるほど、世の中からは瞬間接着剤の会社として認識されていますが、暮らしや産業に欠かせない多くの製品を提供しています。その中でも基幹化学品事業はすそ野が広く安定的な収益基盤を築いており、開発に一定の時間が必要な高付加価値製品群のチャレンジをアシストする形になっています。この両輪をしっかり回していくことが重要であり、当社グループの強さの源泉ともいえます。引き続き、既存事業の競争力強化と成長事業への積極投資を進める「両利きの経営」を推進し、企業価値の向上を目指してまいります。
ステークホルダーの皆様におかれましては、これからも当社グループの未来成長にご期待いただき、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。